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人と人をつなぐおもちゃに出合える美術館

東京おもちゃ美術館(東京都新宿区 「四谷ひろば」)

vol.27 人と人をつなぐおもちゃに出合える美術館

東京・新宿区。2007年春、長い歴史をもつ四谷第四小学校が少子化を理由に閉校した。しかし、地域住民の要望により学校は取り壊されることなく、今年4月に地域交流の場「四谷ひろば」となって生まれ変わった。そこに、11の教室を借り受けて運営している「東京おもちゃ美術館」を訪ねた。

この美術館の前身は、中野区で23年間数々のおもちゃを紹介してきた「おもちゃ美術館」。

「今回のリニューアルオープンで7倍の広さになり、膨大な所蔵品がより効果的に展示できるようになりました」と話すのはスタッフの山田さん。収集した数万点に及ぶコレクションは日本各地の郷土玩具、おもちゃ作家による木製のおもちゃ、世界中から集められた多種多様な遊び道具、ボードゲーム等々。ここでは、こうしたおもちゃを見て、触れ、心ゆくまで遊び、さらに創作もできる。来館者は子供が多いものの、様々な世代の人々がおもちゃに夢中になっている。

「これどうやるのー?」「うーん、こうかなあ」「あ、それはここをもって、こうして......」。こんなやりとりが、館内のあちらこちらから聞こえてくる。「おもちゃは子供の遊び道具であるだけでなく、人と人を結ぶコミュニケーションツールでもあります」と山田さん。見ず知らずの人同士でも会話が自然に生まれる。遊び方がわからなければ、赤いエプロンを着けたボランティアの「おもちゃ学芸員」が教えてくれる。

「館内の内装や家具はすべて職人さんによるものです。鹿児島や岡山、青森などから集まった職人さんたちがそれぞれの産地の木材を使って、寝泊まりしながら仕上げてくれました」。館内に20ほど配置された多種多様の木組み小屋や実際に点前もできる小さな茶室など、それぞれに優れた技巧が見てとれる。

さて、お宅に壊れたおもちゃはないだろうか? 毎月第1・3土曜日、おもちゃドクターが美術館にやってくる。「これで電池残量を調べて、こっちのは赤外線が出ているかどうかわかるんだよ」。ドクターのひとり、岡田さんが牛乳パックや防犯ブザーからつくった創意工夫の修理道具を見せてくれた。その日のうちに直らなかったら入院ね、と笑う岡田さんは、壊れたクワガタのおもちゃを修理している。電車を乗り継ぎ、ボランティアで来ているそうだ。「子供が喜ぶ顔がみたくてね」。そう言って、直したおもちゃを子供に手渡した。

おもちゃは使い捨てではない。流行に左右されることなく使い続けられるおもちゃは、街の玩具店では簡単には見つからない。最後に、おもちゃ作家たちの独創的なおもちゃを集めたミュージアムショップに立ち寄るのをお忘れなく。

(2008年秋号)

東京おもちゃ美術館

□東京都新宿区四谷4-20 四谷ひろば内
□Tel.03-5367-9601
□10:00?16:00 木曜日休館
□おもちゃ病院 毎月第1・3土曜日 10:00?15:00
□入館料/子供500円(3歳未満は無料) 大人700円
□HP http://www.goodtoy.org/ttm/index.html
ボランティアによって支えられているこの美術館は『一口館長』を募集。1万円以上の寄付で名前を刻んだ積み木が入口の壁面に半永久的に掲示される。