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拾い集めた木の枝で、小さな家をつくろう。

国立富士見台第一団地ほか(東京国立市 接近―V」展)

vol.28 拾い集めた木の枝で、小さな家をつくろう。

この秋、東京都国立市の国立富士見台第一団地をメイン会場に、地元のアーティストらの参加による「接近―V」展(TACネットワーク)が行われた。その展示の一つ、小さな家〈ナチュラルハウス〉を訪ねた。ガーデナーであるデイビット・ポラードと建築家である和久倫也によるワークショップだ。

「僕らが作っていると、好奇心いっぱいの子供たちは自然に寄って来て手伝い始める。自然発生的なワークショップです」。

広葉樹の枝で、小さな家をつくる。素材の枝は、地元の街路樹の剪定枝や、遠く奥多摩の森林で拾い集めたものだ。太さや形もいろいろの枝を、巧みに取り合わせて結束バンドで組んでいく。プラスチックの結束バンドを使ったのは、子供たちの手でも組み立てることができるようにという配慮。イギリスでワークショプの指導を行ってきたデイビットさんの提案だ。

枝を一本ずつ手にして、ああでもないこうでもないと即興の創作は約3週間続いた。長い桟橋と舟が出来たと思ったら、やがて桟橋は短く縮小。大きな樹木が現れたと思うと、すぐに消滅。「昨日の大きな樹はどうしちゃったの?」と、子供たちは興味津々。「作ってはみたものの、 美しくないという理由で壊しました」と和久さん。

そもそも、イギリス人であるデイビットさんと日本人の和久さんとでは、「家」に対する原風景がまったく違う。小さな家を協同で創作する作業は、お互いの住まいへの価値観や美意識をぶつけ合う「戦い」でもあったという。

「屋根勾配はもっと急にして、軒を長く」という和久さん。対してデイビットさんは「緩やかな勾配で煙突も必要だ」と主張する。窓も、和久さんは横長、デイビットさんは小さな四角。木造の家と、石造の家との違い。

「僕が小さい頃、子供たちの遊び場だったこの団地の広場は、樹々に覆われた緑地でした。大きくなった樹々を管理するのはたいへんだけど、緑や草花の価値を、みんなに思い出してほしい」と和久さんは言う。

小さな家の中には鉢植えの草花が並び、次々と色とりどりの花を咲かせた。いい香りを辺りに漂わせる。夕暮れにはキャンドルが灯された。

会期修了後は、「うちの庭に貸してほしい」という近隣の方が現れたため移築され、日々、近所の子ども達の遊び場として活躍している。来年は和久さんの母校である小学校に移される予定だ。

デイビットさんと和久さんは現在、東京都国立市在住。この後も機会があれば二人でワークショップを続けていきたいという。

(2009年冬号)

「小枝でまちを作ろう!」

二人が11月に行った子ども向けワークショップ「小枝でまちを作ろう!」が2008年明けまで、21_21 DESIGN SIGHT(六本木東京ミッドタウン)で展示。

ワークショップの問合せは、
□Tel.042-575-9428 
□Email. info@wakuworks.jp
□(国立本店店長 和久倫也)まで。