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古い商店街になじむ、暮らしの道具店

musubi(東京都国立市)

vol.40 古い商店街になじむ、暮らしの道具店

 JR南武線「谷保」駅から徒歩5分。国立ダイヤ街商店街の一画に今年6月、暮らしの道具店「musubi」が開店した。商店街は昭和が息づく懐かしい風情。「musubi」はそこにすっぽり違和感なくおさまる。

「新築したのに、リフォーム?って聞かれるんですよ」と店主の坂本眞紀さん。もとは築40年ほどのクリーニング店兼住宅で、古いが丁寧に住み込まれた様子が気に入った。改修を希望したが土地と建物の性質上難航した。悩んだ末、建て替えに至る。

「間取りもほぼ前と同じで、設計した実感がなくて(笑)」とは眞紀さんの夫で建築家の寺林省二さん。ここからほど近い大学通り沿いの借家(小誌10号で紹介)は取り壊されることになり、新しく場をもとめたのだ。建坪8.5坪、ここに店舗兼設計事務所、それに家族3人の住まいも兼ねる。店と事務所は収納棚を境に背中合わせ、一段上がった奥は家族の食卓と台所。

「食事風景が通りからまる見え(笑)」。「でも商店街の他のどの店も、奥に暮らしの気配がある。声をかけると"はーい"って奥さんが前掛けで手を拭き拭き現れる、そんな昔みたいな感じも悪くないか、と」。そう二人は話す。

 かつてインテリアショップのバイヤーとして世界を飛び回っていた眞紀さん。貴重な体験だったが、シーズンごとに商品をどんどん生み出すことに疑問も感じた。長く使えるたしかなものだけを丁寧に紹介したい気持ちが高まった。

 籠、小箒、陶器、塗り物・・・一つひとつ道具を紹介する小さな札に書かれた丁寧な手書き文字。その多くが寺林家の愛用品だ。毎日の暮らしの実感をこめて、お客さんというより親しい友人にお勧めしているような、そんなお店だ。

(取材・池内美和)

musubi
□東京都国立市富士見台1-8-37
□営業時間:11 時?17 時半
□定休日:日・月・木・祝
□Tel. 042-575-0084