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道行く人々をハッと驚かせる 小粋な美容室のディスプレイ

fujikawa(東京都港区)

vol.522 道行く人々をハッと驚かせる 小粋な美容室のディスプレイ

 南青山の裏道に佇む古いビルの一角。絵や写真で彩られた、懐かしくも斬新なディスプレイは、一度見たら忘れられない。女性の横顔、髪を切られる少女、鬚のオンパレードなど、ときおり内容が変わるため、遠まわりしてでも見に行きたくなる。

 ここは、藤川佳さん、榎本ゆきのさん夫妻が営む美容室。オープンして半年になる。2人でできる精一杯のもてなしをしたいと、心落ち着く静かな場所に店を構えた。店のデザインは、古道具と布製品を扱う「petit cul」を営む美術家・澄 敬一さん。澄さんのパートナーの布作家・松澤紀美子さんの髪を切っていた縁で、2人に相談を持ちかけた。「澄さんは、いろいろな道しるべを与えてくれたんです」。

 髪を切る2席は、足を切った背の高い絵画用の椅子と、フレームのみ生かしてリペアした古いトーネット。窓の亀甲ガラスは、青山通りで解体中だったビルに直談判して譲り受けた。什器は澄さん、ファブリック類は松澤さん、紙類は友人のデザイナー宮巻 麗さんが担当している。

 件のディスプレイは、レール上をボードが左右に動き、目隠しとしても使える。木製フックの裏面が磁石になっており、それで紙を留める仕組みだ。本やポストカードから好きな絵や写真を探して拡大コピー。鋏で切ってペタペタつなぐ。「髪と紙は切りますが、この店が生まれてきた縁の糸だけは切ってはいけないと思っています(笑)」と藤川さん。宝箱のような店の随所に、素敵な企みが眠っている。(文・永峰美佳)

fujikawa
□東京都港区南青山4-12-3-102
□Tel. 03-3401-5202
□11:00~20:00
□火曜定休、不定休